国際結婚の相続 子の国籍は?/名古屋の税理士法人アイビスが解説
◇名古屋の税理士法人アイビス 相続サポートセンターがご説明します
長年、確定申告に関与していたAさんが早世されました。
今回、Aさんの相続に際して初めてAさんの国籍を知ることとなりました。
国際結婚の場合、知らないことだらけでヒヤリとすることがありますので今回は具体例を挙げてご紹介します。
被相続人が外国人の場合
税理士 亡くなられたAさんの国籍は、韓国だったのですね!初めて伺いました。
Aの奥様 そうなんです。いわゆる在日韓国人で、日本人の私との間には大学生の子供がいます。これが私の日本国籍です。
税理士 拝見しますね。戸主である奥様の戸籍にAさんとお子さんの戸籍が載っていますね。 Aさんの戸籍は「韓国」となっていますが、韓国の戸籍はありますか?
Aの奥様 それが方法がよく分からないです。
税理士 そうですか。日本の国籍でしたら職権でとれるのですが・・。では、申告期限も迫っているので、後日一緒に領事館へ行う事にしましょう。
領事館で戸籍などを取得
Aの奥様 ようやく、韓国の戸籍も取れました。
税理士 日本語の翻訳も早くできてよかったですね。でも、確かに太郎さんの婚姻証明と家族証明にお子さんが見当たらないですね・・。
Aの奥様 ほんとですね。結婚した際には、韓国の戸籍に届出した記憶があるのですが、子供が生まれたときには、日本にしか届出しなかったかもしれません。どうしたらいいでしょう。
二重国籍はどうなる
税理士 現状を整理します。お子さんについては当初、日本と韓国の両方に届出をして二重国籍となった後、成人後にいずれかを選択すべきところ、日本にしか出生届が出ていないとういうことになりますね。
Aの奥様 お子さんは私の戸籍に入っていて、パスポートも普通に持っています。二重国籍については考えたことなかったです。
税理士 対応策としては、①韓国でお子さんに出生申告を行い、②かつ、韓国籍を離脱する。 手続を行った後、③日本に「外国国籍喪失届」を提出する、という段取りになります。
Aの奥様 かなり面倒になりそうですね。
税理士 確かに、ここまで行う必要があるのでしょうか・・。相続の名義変更の進捗に応じて検討することにしましょう。
まとめ
国際相続は各国の相続法や登録制度を理解しないと、スムーズに進みません。今回は筆者が経験した韓国の例に限定されますが、以下に注意点を掲げておくことにします。
・被相続人の国籍はもちろんのこと、国際結婚の場合には相続人の国籍も確認する必要があります。また、職務上請求書の範疇外(ハンチュウガイ)となる書類が多く出てきます。
発行されるまで時間がかかるものもあります。余裕をもって取り組むことが最重要です。
・日本で生まれた子供については、韓国戸籍への届出がされていない場合も多いようです。(子供は表面上、日本国籍とのみなっています。)
なお、男子については韓国戸籍に届け出る場合、35歳まで兵役への影響がわずかながら出てくるとのことです。
・準拠する相続法は、被相続人の本国法となりますので、この辺りの知識の習得も必要となります。ちなみに、韓国での法定相続分は、配偶者は子の5割増しとなるため事例では、Aの奥様3/5、お子さん2/5となります。
対策
・国際結婚の場合、その被相続人と相続人の国籍はどうなっているかを確認。
・日本の戸籍のみの確認では不十分。相手の国の国籍(準するのものを含む)も当然に確認。
・被相続人が外国人の場合には、その国の相続法が採用される。将来の相続に備える場合には、日本法に準拠する旨の遺言を作成しておくのも有効な対策となります。